生活協同組合パルシステム千葉(通称:パルシステム千葉)1月13日(金)、政府が募集する「電力システム改革貫徹のための政策小委員会」による中間とりまとめに対しパブリックコメントを提出しました。原発事故による賠償・廃炉費用について、国民の目に見える制度を求めます。
資源エネルギー庁は2016年12月19日(月)から、総合資源エネルギー調査会の「電力システム改革貫徹のための政策小委員会」による中間とりまとめに対してパブリックコメントを募集しています。
これを受けパルシステム千葉は2017年1月13日(金)、原発事故による賠償ならびに廃炉費用を託送料金に上乗せして回収する制度変更に反対し、透明性の高い制度と国民的な議論を求める意見を提出しました。
パルシステム千葉では、2011年に発生した東京電力福島原子力発電所の原発事故以降、被害の甚大さ、放出された放射性物質による人体、環境への影響などから「原子力発電を止めよう!」を政策に掲げ、さまざまな取り組みを行っています。
放射性物質と二酸化炭素を排出しない、再生可能エネルギーの拡大を目指し、自前設備へソーラーパネルを設置しているほか、産直産地の農地にソーラーパネルを設置しソーラーシェアリングの取り組みを行っています。また、4月からはパルシステム電力による再生可能エネルギー中心の電気の小売も開始します。
▼意見書「電力システム改革貫徹のための政策小委員会・中間とりまとめに対する意見」-全文
2017年1月13日 資源エネルギー庁電力・ガス事業部 電力市場整備室 パブリックコメント担当 様 生活協同組合パルシステム千葉
電力システム改革貫徹のための政策小委員会・中間とりまとめに対する意見
意見提出にあたり、パルシステム千葉の電力エネルギーに関する基本的な立場を明記します。パルシステム千葉は「減らそう! 止めよう! 切り替えよう!」をエネルギー政策としています。
今回中間とりまとめで示された「電力システム改革」は、わたしたちの目指す方向に一致しているでしょうか。 今回の中間とりまとめはたいへん多岐にわたり内容は分りづらく、意見を提出する人への解説等も無く、一般消費者から意見を出させない意図があるかに見えます。
中身は、制度化を急ぐ原子力発電関連の費用を規制料金が残る託送料金を利用して徴収しようとする件と、具体的な検討はまだまだこれからという新市場創設の課題が混在しています。 具体的な制度について触れている課題では、原子力発電という電源を特別扱いに擁護する非常に偏った政策と受けとめました。 6ページ欄外の8の記述―これまで東京電力などの原子力発電がエリアを限って供給されてきたところ、ベースロード電源市場を通して全国に原子力の『低コストで安定的な』電気が供給され、継続的に原発立地地域への経済的還元が期待できる。―とあります。 これは、自然エネルギーを最大限利用し分散型で地域ごとの事業者や消費者の要求に応じられる仕組みとは程遠いものです。 電力システム改革としての一貫性に乏しく、既存の大手電力会社の存続問題を含めた現状課題を切り抜けることだけを追求しています。 以下に、納得できない点、また反対意見を記します。
1、原子力発電のコストは本当に安いでしょうか 低コストで安定供給が可能なベースロード電源として石炭火力、大型水力、原子力があげられていますが、原子力発電はどのように算出すると“安い電気”になるのでしょうか。 原子力発電事業では、特殊な会計制度が使われています(原発への初期投資に関する原子力発電工事償却準備引当金や、原発を廃止する際の費用に関する使用済燃料再処理引当金、原子力発電施設解体引当 金、特定放射性廃棄物処分費の制度がある)。特殊な会計制度が改正を重ねて複雑になり、原発事業にかかる経費は消費者に見えにくくなっています。 福島のような事故による損害賠償準備費用まで試算に含めた場合、ミドル電源とされている天然ガス火力よりも高い電気になりませんか。特殊で複雑な会計制度をひも解いて、明朗会計で国民にすべての経費を公開してください。
2、自由化の下での財務会計面での課題について (1)原子力事故の賠償への備えに関する負担の在り方について 賠償費用の一部を託送料金で消費者全体から徴収する案に反対です。 国民の誰もが、福島原発事故による被害は救済されなければならないと考えています。 しかしその大前提として、本来賠償の負担を負うべき東京電力、「原発は安全です」と言い続けてきた国の責任を明らかにしてください。 そのうえで、賠償にかかる数字を示して国民負担が不可欠であることを説明し、負担の仕組みについて検討をしてください。 また、広く消費者全体から徴収する案の根拠として「2011年原子力損害賠償法が原子力損害賠償・廃炉等支援法に改訂される以前は、原発事故賠償への準備金を徴収していなかったので、過去分を支払ってもらいます。」としています。このような理屈は、ふつうのくらしでは到底通用しません。 (2)福島第一原発の廃炉の資金管理・確保の方法 東京電力グループの送配電会社・東京電力パワーグリッド(株)の託送料金から、廃炉経費を調達しようとする案は拒否します。 託送料金は、送電網の設備・整備・運用に関する費用を、送電網を利用する小売り事業者が支払う費用であり、新電力から電気を購入する消費者が支払う料金の30%以上を占める現状です。 電気を選択できる小売り自由化と言いながら、有無を言わせず福島第一の廃炉費用を上乗せされるなど、とうてい納得するものではありません。 (3)自由化の下での廃炉に関する会計制度 廃炉に関わる費用は発電費用の一部であり託送料金に含めるべきではありません。 通常、事業をおこなう者は設備の改修・廃棄費用を含みこんで事業計画を立て、必要となる費用を確保します。社会で事業をおこなう者の常識です。 原子力発電事業のみが、公共料金の性格を持つ託送料金によってこの費用を徴収するということは、他の発電方法、また一般的な事業との公平性に反します。電力システム改革の理念に逆行します。 廃炉に関わる費用は、電力を販売する原子力発電事業者がその販売価格の中に含めて回収するべきです。これは火力発電であれ、水力発電であれ、再生可能エネルギー発電であれ、全ての発電方法について共通の考え方です。
審議会の名にあるとおり「電力システム改革を貫徹」するなら、託送料金は純粋に送電網送電設備を使う料金として算定され、消費者が納得できる情報開示がされるべきです。
3、連系線利用ルールの見直しについて 地域をまたぐ送電線の利用ルール検討では「経済性の高い電源開発を促進する連系線利用ルール」をつくるとし、コストの安い電源から送電線利用を可能とする間接オークション方式とするとしています。これは、限界コストの安い再生可能エネルギーによる電気が連系線を利用できる可能性が高くなったと言えます。 しかし、FIT再生可能エネルギーは買取り義務者である送電事業者が出力抑制を求めることができるルールがあり、他方面でも、検討・調整が必要です。 ・送配電事業者が「新たな連系線利用ルール」を適正に運用することができるよう、送電部門の中立性をさらに高め、法的分離、所有権分離まですすめてください。 ・東北東京間連系線の増強が必要とされているように、再生可能エネルギーを含むエリアを超えた送電を実現するための設備は、特定の事業者の負担を求めるだけでなく、政策として投資判断をしてください。
4、ベースロード電源市場の新設について なぜ、現在ある市場「日本電力取引所(JEPX)」の機能を強化する制度整備でなく、新市場を作らなければならないのでしょうか。 ・既存大手電力会社の持つ電気を市場に出させる方法は、新市場を作らなくてもあると考えます。 ・経済産業省、電力・ガス取引監視等委員会が、大手電力会社に先渡し市場への電力供出を促すこと。大手電力会社に保有する発電機を限界費用の順に並べ(メリットオーダー)、それぞれの実際の発電量を規制側に報告させ、市場への供出割合を指導するなど市場機能の強化を追求してください。
5、非化石価値取引市場の創設について 温暖化防止・CO2削減のために非化石価値取引市場をつくるとあります。 極めて安全性に疑問のある原子力を、非化石燃料であるというだけで、再生可能エネルギーと同じ価値を持つと見なす仕組みはやめてください。 再生可能エネルギーによる発電の価値は単独で選択できる仕組みにしてください。
以 上 |
生活協同組合パルシステム千葉 企画・広報部
TEL 047-420-2605 / FAX 047-420-2400
ホームページアドレス https://www.palsystem-chiba.coop / E-mail palchiba-hp@pal.or.jp
生活協同組合パルシステム千葉 千葉県船橋市本町2-1-1 船橋スクエア21 4階
理事長:佐々木 博子
組合員総数:22万人(2015年度末) 総事業高:295.4億円(2015年度末)